拓海広志「いつも背筋を伸ばして対面したい人 : 大串龍一さん」

 久しぶりに金沢で、大串龍一さん(金沢大学名誉教授。河北潟湖沼研究所理事)、本田和さん(ものがたり人)、盛本芳久さん(石川県議会議員)とお会いし、お酒を飲みながら歓談する機会を得ました。僕は、大串さんとは今から18年ほど前にスマトラ島のパダンから車で4時間ほど走った山中で出会って以来のお付き合いで、本田さん、盛本さんとは今から8年ほど前にアルバトロス・クラブ能登ツアーでご一緒して以来のお付き合いです。


 大串龍一さんは日本を代表する昆虫学者、生態学者として知られる方ですが、いわゆるアカデミズム的な世界にこもるタイプの学者ではなく、農業や林業の現場とも深く関わってきました。また、民俗学的な方面への関心と造詣も深く、僕は初めてお会いしたときに舳倉島や七ツ島で活動する漁民の文化の話で盛り上がったことを覚えています。


 大串さんはいつも物静かで、とても優しく穏やかな態度で他人と接する方です。しかし、これまでのお付き合いの中で起こった様々な出来事を通して、僕は大串さんの人間としての芯の強さと自己を厳しく律する人生の姿勢、また人間という存在に対する深い洞察と愛情を知りました。


 大串さんはかつて『日本の生態学今西錦司とその周辺』という著作の中で、「天皇」とまで呼ばれてカリスマ的な影響力を持っていた今西錦司さんの業績を評価しながらも、その学説の問題点なども冷静かつ的確に指摘しており、僕はそれを読んだときに大串さんの文章を貫く気骨と率直さに感じ入ったことを覚えています。


 また、かつてアルバトロス・クラブが田辺の南方熊楠記念館で開催した在野の昆虫学者・後藤伸さんの講演会にも、大串さんは駆けつけてくださいました。後藤さんはアカデミズム的な世界とは一線を画して活躍した方ですが、大串さんは後藤さんの業績についても高く評価されており、そこにも僕は大串さんの公正さを見ました。


 大串さんはここ数年の間に3冊の連作小説を出版し、その文学的才能でも周囲を驚かせていますが、「太平洋戦争を知る世代が数少なくなっていく中で、自分にはどうしても書き残しておきたいことがあるのです」と大串さんは語ります。自伝的な要素もあるそれらの作品を読みながら、僕は自分も大串さんのようにしっかりと背筋を伸ばして生きたいと改めて思いました。


(無断での転載・引用はご遠慮ください)


日本の生態学―今西錦司とその周辺

日本の生態学―今西錦司とその周辺

天敵と農薬―ミカン地帯の11年

天敵と農薬―ミカン地帯の11年

病害虫・雑草防除の基礎 (農学基礎セミナー)

病害虫・雑草防除の基礎 (農学基礎セミナー)

栽培植物の保護 (農学基礎セミナー)

栽培植物の保護 (農学基礎セミナー)

セミヤドリガ (日本の昆虫)

セミヤドリガ (日本の昆虫)

水生昆虫の世界―淡水と陸上をつなぐ生命 (TOKAI LIBRARY)

水生昆虫の世界―淡水と陸上をつなぐ生命 (TOKAI LIBRARY)

城跡の自然誌―金沢城跡の動物相から

城跡の自然誌―金沢城跡の動物相から

農薬なき農業は可能か (人間選書 (54))

農薬なき農業は可能か (人間選書 (54))

kupu‐kupuの楽園―熱帯の里山とチョウの多様性

kupu‐kupuの楽園―熱帯の里山とチョウの多様性

日本の短い夏 一九五〇・六〇年代の青春群像

日本の短い夏 一九五〇・六〇年代の青春群像

山峡の空

山峡の空

火炎樹の下で 日本の短い夏 第二部

火炎樹の下で 日本の短い夏 第二部

拓海広志「奈良県立大学にて・・・」

 地域創造学部というユニークな学部を持つことで知られる奈良県立大学の亀山恵理子さんの依頼を受け、同大学の講堂で東南アジア(主としてインドネシア)とミクロネシアの海洋文化に関する授業をさせていただきました。


 200名近い学生との対話形式の授業はなかなか愉しく、授業が終わってからも数名の学生とランチを共にしながら様々な語らいをしました。僕にとってこういう時間はとても大切で、この日も若い感性との触れ合いの中で多くのことを学ぶことができて嬉しかったです。


 学生たちからもらったフィードバックシートの中から幾つか選び、紹介させていただきます。


   *   *   *   *   *


※Aさん「世界の60ヶ国を旅し、そのうちの幾つかの国で生活してきた拓海さんが、『どこへ行っても、現地の人が普段から食べているものを自分も食べて美味しいと思うようになることが大切だ』と言うのを聞き、「なるほど!」と思いました」


※Bさん「90分の独り舞台。内容もさることながら、拓海さんの話は構成や間の取り方などがとても上手くて、自分も人前で話す仕事、司会などをやりたいという思いに火が点いた!」


※Cさん「ニャイ・ロロ・キドゥルの話を聞き、インドネシアイスラムの深層にある自然信仰のことがわかったように思います。それがインドネシアイスラム教徒が過激な原理主義に走りにくい理由なんでしょうね」


※Dさん「拓海さんの話を聞いていて、年齢などと関係のない「若さ」を感じました。思い立った時に実際に行動に移していけることは大切ですね。私も自分の思いを大切にし、行動して生きていこうと思いました」


※Eさん「実際の体験に裏打ちされた、とてもワクワクする話ばかりでした。私たちの年齢の頃には既に日本中を、そしてアジア太平洋の各地を旅していたという行動力を見習いたいです」


※Fさん「ナマコというものが世界各地の海で獲られ、それが中国及び華人圏に送られるネットワークが存在することに驚いた。今回の講義は本当に驚かされることばかりでした」


※Gさん「インドネシアのドゥクンや日本のイタコを、頭からオカルトや迷信だと決め付けない拓海さんの話し方に、多くの国・地域を旅してきた人の風格のようなものを感じました」


※Hさん「船の建造や航海に必要な『身体知』という言葉を聞いて、ハッとしました。また、質疑応答が多かったのが愉しかったです。本当に、皆で一緒に授業を作っているように感じました」


※Iさん「川で水浴や洗濯をし、食器や野菜を洗い、そこに大小便も流す。そんな生活は汚いと思いましたが、必ずしもそうではないことを聞き、自然の持つ浄化力(エントロピー除去力)に驚きました」


※Jさん「『私も旅をしたい!』と強く感じた授業でした。拓海さんは子どもの頃から現在に至るまで一貫して「海」と関わっており、私もそんなふうに軸のある生き方をしたいと思いました」


※Kさん「一見同じように見えるカヌーなのに、よく見ると形が違う。そうした「モノ」を通して「ヒトと自然の関係性」について知ることの重要さと楽しさを学んだように思う」


※Lさん「拓海さんが撮った写真の中の、インドネシアミクロネシアの子どもたちはどれも生き生きしていますね。お話だけではなく、そのことにとても感動しました」


※Mさん「日本から世界を見る際に、韓国や中国、台湾、ロシアが隣国だというのは誰もが思うが、太平洋に目をやるとミクロネシアも隣国なんだと知った。そうして考えると、ミクロネシアと東南アジアも確かに近い」


※Nさん「『物語が共有されなければ、社会は成り立たず、通貨も価値を持ち得ない』という話を聞き、なるほどと思いました。自分の世界観が大きく拡がった授業でした」


※Oさん「家船で生活しながら国境を越えて移動するバジャウ族の人たち話を聞き、私たちの常識とはまったく違う生活、人生があるのだということを理解しました」


※Pさん「私たちが使っている貨幣は単に商品との交換のためだけの存在だけど、ヤップ島の石貨にはそれまでのプロセス、歴史にも価値を置くものであることを知り、それは大切な感覚だと思いました」


※Qさん「一見楽園のようにミクロネシアだが、実は自殺率が高いということを聞き、とても驚いた」


※Rさん「本を読んで学ぶこと。また、経験を積み重ねることで学ぶこと。それらの組み合わせの重要性について改めて実感することができた授業でした」


※Sさん「身体知という言葉が印象的でした。現代人は道具に頼りすぎているために、これが衰えてきているのだろうか? しかし、我々も自然と関わることで、それを取り戻すことができる」


※Tさん「この授業を通して、異文化を知ることは自らの文化を見直すきっかけになり、違う社会を支援したいとか、違う社会と関わりたいという思いに繋がることを理解しました」


※Uさん「拓海さんが『船を見れば、その地域の人々がどのように海と付き合っているかが見えてくる』と言ったことが、とても印象に残りました」


※Vさん「様々な国とのビジネスの中でマネジメントを学ぶことは、世界中で使える技術を学ぶことだと私は思いますが、その手法に国・地域による特徴はありますか?」


※Wさん「海を通じて、日本とミクロネシア、そして東南アジアは本当につながっているのだということを理解しました。そんな実感をつかめる旅を僕もしていきたいです」


※Xさん「身体知はオカルトでも何でもなく、現代科学とは少しパラダイムが異なってはいるものの、やはり科学であると考えるべきもの。その考え方にうなづきました」


※Yさん「国に属するという意識を持たない移動性向の高い民族が、国への所属を強要され、自らの文化的アイデンティティまで否定されるという話を聞き、それはよくないと思いました」


※Zさん「拓海さんが若い頃からしてきた旅の中で感じた『人の温かさ』。そのことを聞いていて、凄くいいなぁと思いました。私も旅をしたいと思います」


   *   *   *   *   *


 他にもたくさんの素敵なフィードバックをいただきました。奈良県立大学の皆さん、本当にありがとうございました。次回は、是非音楽を一緒にやりましょう。再会の機会を楽しみにしています!


(無断での転載・引用はご遠慮ください)


ビジュアルでわかる船と海運のはなし

ビジュアルでわかる船と海運のはなし

拓海広志「南の島の星降る夜に : 大内青琥さん」

 画家の大内青琥さんの七回忌に招かれ、多摩霊園へ行ってきた。梅雨時の蒸し暑い日だったが、霊園の木陰を歩いているととても心地よく、僕は大内さんの息子の将さん、大内さんの支援者だった辰野和男さん(朝日新聞で「天声人語」の執筆を担当なさっていた方)、アルバトロス・プロジェクトミクロネシアの伝統的帆走カヌーによるヤップ〜パラオ間の石貨交易航海再現プロジェクト)メンバーの一人・柴田雅和さんらと共に、大内さんの思い出を大いに語り合った。


 僕が大内さんと最初に出会ったのは、僕が初めてヤップを訪ねた1990年のことで、以来数年にわたってとても濃密なお付き合いをさせていただいた。大内さんは当時ヤップ島マープの総酋長だったベルナルド・ガアヤンさん宅に居候をしており、ミクロネシアの伝統的帆走カヌーに関心を持ってヤップを訪ねるようになった僕と大内さんの間には、カヌー、ヤップ、ガアヤンさんという三つの接点があった。


 ※関連記事
 拓海広志「初めてのヤップ(1)」
 〜 拓海広志「初めてのヤップ(9)」
 拓海広志「渡海−人は何故海を渡るのか?(1)」
 〜 拓海広志「渡海−人は何故海を渡るのか?(3)」


 ところで、ガアヤンさんは友人のジョン・タマグヨロンさんと一緒に帆走カヌー「ぺサウ」を作って、ヤップから小笠原までの航海を行ったことがある。大内さんはその建造記録を残すと共に、「ぺサウ」の航海にも参加している(現在、「ぺサウ」は尼崎の園田学園女子大学に保存・展示されている)。大内さんの書かれた建造記録は太平洋学会の学会誌にも掲載され、僕も大いに参考にさせていただいた。


 大内さんは芸術家らしく非常に繊細な感受性を持った方で、人見知りで寂しがりや、そしてとても気性が激しくてロマンチストだった。ガアヤンさんの家の前の椰子の葉陰で、月と星の明かりを頼りに椰子酒を飲みながら語り明かした幾夜・・・、ガアヤンさんと大内さんと僕は、太古の太平洋の、そして縄文の海人たちに思いを寄せながら、帆走カヌーの航海について語り合った。それは実に壮大かつ愉快な会話で、胸躍る素敵な時間だった。そして、大内さんと僕は喧嘩もたっぷりした(笑)。
 

 その後、僕はアルバトロス・クラブの仲間たちと共に、かつてヤップ〜パラオ間で行われていた石貨交易航海の再現プロジェクトを実行することを決めた。そして、僕らのプロジェクト・チームは3年がかりでヤップの酋長会議と州政府の承認を取り付け、2年近くをかけて原木の切り倒し〜帆走カヌー「ムソウマル」の建造、そしてクルーの人選とパラオ側との交渉も行い、1994年にヤップ〜パラオ間の往復航海を実現することができた。


 大内さんはアルバトロス・プロジェクトの発足当初は部分的に関与してくださっていたのだが、やがてガアヤンさん宅への居候をやめて帰国してしまったため、プロジェクトとの関わりはなくなってしまった。それでも、大内さんがアルバトロス・プロジェクト発足時の功労者の一人であることに違いはない。また機会があれば、是非ヤップで大内さんとお会いしたいと思っていたので、その想いが果たせなかったのが心残りである。大内さんのご冥福を心からお祈りしたい。


(無断での転載・引用はご遠慮ください)



ミクロネシアのヤップ島マープ・ヴォネッヂ村。ベルナルド・ガアヤンさんの家の前の通り】


ヤップの島の物語

ヤップの島の物語

文章の書き方 (岩波新書)

文章の書き方 (岩波新書)

文章のみがき方 (岩波新書)

文章のみがき方 (岩波新書)

辰濃和男の天声人語〈人物編〉 (朝日文庫)

辰濃和男の天声人語〈人物編〉 (朝日文庫)

天声人語〈人物編〉

天声人語〈人物編〉

天声人語 自然編

天声人語 自然編

拓海広志「小笠原の母島にて・・・」

 25年ぶりに小笠原諸島の父島、南島、母島を訪ねてみた。東京の竹芝桟橋から父島までは「おがさわら丸」(小笠原海運)で25時間半。父島から母島までは「ははじま丸」(伊豆諸島開発)で2時間。航海時間を大幅に減らせる可能性のあったTSL(テクノスーパーライナー)の就航計画が頓挫したため、小笠原は東京都に属していながら東京都心から遠い場所であり続けている。


 今回の旅のメインの訪問先は母島だった。母島は、父島と比べてみても森と海の気が強く、僕は好きだ。母島ではウミガメ漁師・築舘宏文さんの宿に泊まり、築舘さんから小笠原の伝統であるアオウミガメ漁の話を聞いた。もちろん、小笠原ではウミガメの保護活動が熱心に行われており、漁はそれと矛盾せぬように厳しいルールの中で行われている。


 僕はインドネシアの離島やミクロネシアなどでウミガメ料理を食べたことが何度かあるが、日本でも小笠原や八重山ではウミガメを食べることができる。小笠原のアオウミガメ漁は主として4月に行われるため、4月から5月の初めにかけては新亀の肉が食べられ、父島だとスーパーなどでも販売される。新亀だと刺身で食しても美味しい。


 母島と父島ではウミガメの料理法も若干異なるそうで、築舘さんによると母島の方が煮込みやホルモン炒めであっても、父島の料理よりも臭みが少ないという。確かに、築舘さんの奥様が作ってくださったウミガメの煮込みは絶品だった。もっとも、僕が父島の「丸丈」という寿司屋で食べたウミガメ料理も臭みがなく、特に「カメのチャーシュー」は煮こごりのようで美味しかったが・・・。


 ※関連記事
 上村一真「ローカルミートでスタミナごはん13…ウミガメ料理」
 拓海広志「珍味をめぐる旅」


 母島では「クラブノア母島」にもお世話になり、そのボートダイビングツアーなどに参加した。ダイビングポイントへ向かう途中にザトウクジラの母子と遭遇して、その豪快なブリーチングに感動したり、潜ったポイントでは体長1メートル前後のイソマグロの群れを見たりした。ちなみに、クラブノア母島ではウミガメの保護事業もやっている。


 僕は、クラブノア代表の松田猛司さんと一緒にシンポジウムをやったり、同グループメンバーでアルバトロスクラブ・メンバーでもある森拓也さんと懇意にさせていただいていたりと、クラブノアグループとの縁が少なくない。クラブノアグループの運営形態はエコツーリズムの新たなスタイルとして注目に値するものであり、僕も『島のエコツーリズム』という小文の中で紹介させていただいたことがある。


 ※関連記事
 黒潮実感センター「シンポジウム『豊かな里海づくり』の案内」
 拓海広志『島のエコツーリズム』
 拓海広志「島とエコツーリズム(1)」
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 父島から竹芝へ向かう帰りの船の中で、作家のC.W.ニコルさんと偶然出会い、一緒に酒を飲んだ。僕はニコルさんとは様々な会合の場で過去に3回ほどお会いしているのだが、これまであまりゆっくりと話したことがなかったので、これはとても良い機会となった。僕らは日本の伝統捕鯨に関する話や、ニコルさんが小説『勇魚』を書くために滞在した太地の話などをした。


 ニコルさんと僕の間で意見が一致したことの一つに、今日の小笠原はガラパゴス的に隔絶された自然の素晴らしさだけが強調されているが、仮にその歴史が浅いものだとしても、欧米諸国やポリネシアミクロネシア、また日本本土や伊豆諸島とのつながりの中で形作られてきた島の独特の文化についても、もっと外部にアピールした方がよいのではないかということがあった。


 ※関連記事
 拓海広志「捕鯨をめぐる話(1)」
 拓海広志「捕鯨をめぐる話(2)」
 拓海広志「鯨の向こうに見えるもの(1)」
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 拓海広志『イルカ☆My Love』


 ちょうど母島に滞在していたときに、小笠原が世界自然遺産になることがほぼ決まったという報を僕は受けた。これによって、小笠原の島々を訪れる観光客の数はこれから増えることだろう。僕も次回はもっと長期間滞在をして、小笠原の文化と自然により深く触れてみたいと思っている。


(無断での転載・引用はご遠慮ください)


小笠原ハンドブック―歴史、文化、海の生物、陸の生物 (小笠原シリーズ)

小笠原ハンドブック―歴史、文化、海の生物、陸の生物 (小笠原シリーズ)

小笠原クロニクル - 国境の揺れた島 (中公新書ラクレ (185))

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小笠原自然観察ガイド

小笠原自然観察ガイド

伊豆七島・小笠原 (ブルーガイド―てくてく歩き)

伊豆七島・小笠原 (ブルーガイド―てくてく歩き)

好きです!小笠原 (ニッポン楽楽島めぐり)

好きです!小笠原 (ニッポン楽楽島めぐり)

ちょこ旅 小笠原&伊豆諸島

ちょこ旅 小笠原&伊豆諸島

フィールドガイド 小笠原の自然―東洋のガラパゴス

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小笠原学ことはじめ (小笠原シリーズ (1))

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小笠原諸島に学ぶ進化論 ―閉ざされた世界の特異な生き物たち― (知りたい!サイエンス)

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近代日本と小笠原諸島―移動民の島々と帝国

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小笠原諸島―アジア太平洋から見た環境文化

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小笠原の植物 フィールドガイド

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東京の島 (光文社新書)

東京の島 (光文社新書)

小笠原自然年代記 (自然史の窓 (3))

小笠原自然年代記 (自然史の窓 (3))

舟と船の物語

舟と船の物語

勇魚(いさな)〈上巻〉

勇魚(いさな)〈上巻〉

勇魚(いさな)〈下巻〉

勇魚(いさな)〈下巻〉

拓海広志「On the Kumano Kodo : シルビア・マユガさん」

 財団法人国際文化会館国際交流基金アジアセンターが共催する「アジア・パシフィック・ユース・フォーラム」に、僕は1996年、1997年と2年続けて参加しました。このフォーラムは、アジア太平洋地域の若手リーダーたちが集い、寝食を共にしながら討議することで相互理解を深め、将来にわたる密接な協力関係を築き上げることを目的とするもので、1996年は「開発と文化」をテーマに、8月7日から12日にかけて山形県鶴岡市羽黒町にて、また1997年は「アイデンティティの模索〜変化する文脈のなかで〜」をテーマに、12月5日から14日にかけて沖縄県の名護市と那覇市にて開催されました。


 ※関連記事
 拓海広志「羽黒フォーラムにて(1)」
 拓海広志「羽黒フォーラムにて(2)」
 拓海広志「羽黒フォーラムにて(3)」


 これらのフォーラムを通して、僕はアジア太平洋の各国と山形や沖縄に多くの新しい友人を得ましたが、同時に国際文化会館国際交流基金にも多くの仲間を得ることができました。そして、それ以降も国際文化会館国際交流基金の仲間たちとは、いろいろなことを一緒にやってきました。その一つに、両者が1998年に共催した「アジア・リーダーシップ・フェロー・プログラム」にフィリピンの聖地バナハウ山から参加した作家シルビア・マユガさんの希望を受け、熊野に住むアルバトロス・クラブの仲間たちがリレー形式で案内をすることで、彼女に熊野の旅をしてもらうというプログラムがありました。その旅の様子をシルビアさんがレポートした文章が、下記PDFのP.64〜P.72に掲載されています。ちなみに、文中でHiroshi Etaniと紹介されているのは、僕のことです。


 ※関連記事(財団法人国際文化会館国際交流基金アジアセンター提供)
 Sylvia Mayuga「On the Kumano Kodo」(P.64〜P.72)


 シルビアさんはバナハウ山みどりの連合の議長も務めているだけに、日本古来の聖地である熊野の文化と自然に対して強い関心を持っており、国際交流基金経由で熊野との縁が深い僕とアルバトロス・クラブに熊野案内の依頼をしてこられたわけです。国際交流基金の佐藤万帆さん、和歌山市在住の絵本作家・松下千恵さん、熊野修験の重要な一員である花井淳也さん、田辺をベースに熊野で活躍するジャーナリストの辻桂さん、太地町立くじらの博物館・館長の北洋司さん、那智山青岸渡寺・副住職の高木亮英さん等々、アルバトロス・ネットワークに支えられてシルビアさんの熊野巡行は実現しました。シルビアさんのレポートから、興味深い箇所を少し抜粋してみましょう。


It began with a weekend at the Kii Peninsula in Wakayama Prefecture
southeast of Tokyo, with a young official of the Japan Foundation who
"abducted" me on the last program day. Maho Sato is also a member of
a fascinating NGO called Albatross. It was led by the 32-year old
visionary Hiroshi Etani who was motoring from Osaka with a complement
of Shugendo practitioners eager to cross-pollinate with a student of
animism and mythology from Nanpo, "the islands of the south" in Japan's
ancient chronicles.


 (中略)


"This is where the mountain gods married the ocean gods," said Hiroshi
Etani as we viewed elevations lapped by a shimmering Pacific at sea level.
Before us roared Nachi taki, the waterfall at the core of Seigantoji's
spiritual tradition, arguably Japan's oldest. Its lore says the Indian
sadhu Ragyo sailed into Kumano Bay with six companions in 4 A.D.,
wandered to these mountains and received a vision of Kannon Bosatsu
while meditating behind that taki. This encounter with the boddhisatva of
healing became the founding event of a community of mountain ascetics
and healers, monk and lay, practicing Shugendo all over Japan today.


 (中略)


As Albatross led on through the gentler elevations of the Omine Mountain
Range extending from Kumano in the south to Yoshino in the north, its
kinship with animist Banahaw became a fascinating line of continuity.
Antedating the imperial version that led to war, tribal Shinto's sacred
spaces - cordoned by woven ropes of rice straw, the shimenawa, and
strands of triangular prayers in paper, the gohei, recalled Banahaw's own
pilgrimage route of rock, cave, waterfall and river puestos with candles,
incense and incantations etched in stone. Different climate and vegetation
were like the different flags and symbols expressing the same reverence
for common bedrock of spirit and geology.


 (中略)


Albatross’ vision of Japan’s Austronesian roots shared with Nanpo and the
rest of the Pacific also receives confirmation in Kumano - in Polynesian
words and melodies found in the Kii Peninsula’s festival songs and distinct
Pacific influence on the shapes and decorations of boats celebrated in the
oldest extant paintings of the whale hunt in Japan. This cross-pollination
cut a wider swathe of time and geography.


 このレポートを読むと、シルビアさんが熊野から強いインスピレーションを得たこと、また熊野とバナハウ山とのつながりについても意識したことがよくわかります。僕は北山川瀞峡にある山中の一軒家で月を眺めながら彼女と語り合い、熊野とバナハウ山についてのお互いのビジョンを交換しましたが、僕もその対話からは多くのインスピレーションを得たように思います。


(無断での転載・引用はご遠慮ください)


Philippines: Insight Guides (Serial)

Philippines: Insight Guides (Serial)

Insight Guides Philippines (Serial)

Insight Guides Philippines (Serial)

BANAHAW山の宇宙ステーション

BANAHAW山の宇宙ステーション

拓海広志「理学は、実業の諸問題を解決出来るか−再び」

 昨年の3月13日に書いた「理学は、実業の諸問題を解決出来るか(2)」で紹介させていただいた、ESRIシンポジウム2010「サービス・イノベーションへの期待−理学は、実業の諸問題を解決出来るか−」の続編が開催されました。題して、ESRIシンポジウム2011「サービス・イノベーションへの期待−理学は、実業の諸問題を解決出来るか−」です。


 前回は僕を含む4名のパネラーがビジネスの現場における様々な問題を提示し、それに対して座長の西成活裕さん(東京大学先端科学技術センター教授)をはじめとする理学者の方々(高安秀樹さん(ソニーコンピューターサイエンス研究所シニアリサーチャー)、時弘哲治さん(東京大学大学院数理科学研究科教授)、増田直紀さん(東京大学大学院情報理工学系研究科准教授)、菅原研さん(東北学院大学教養学部情報科学科准教授))が即興で問題解決への道筋を示すという、かなりユニークで刺激的なパネル・ディスカッションでした。僕が提起したのは、互いにトレードオフとなる様々な要求が重なり合うことでトリレンマ的状況に陥りやすいSCM(Supply Chain Management)の全体最適化を進める際に、理学がどのような解を示せるのかということでした。


 西成活裕さんをはじめとする理学者の方々は、「理学の効きどころは『最適化』だ」としながらも、「短期的にピッタリの最適化を目指すことが、必ずしも長期的な適応・生存につながるとは言えない(=生物モデルからのアナロジー)」、「変化の激しい時代に、短期的な視点に立った最適化を繰り返すのは、そのコストが高くつきすぎるし、モデルも壊れやすい。従い、変動に耐えうる『ゆるいモデル』(=準最適解)の方がよい」、あるいは「短期的な利益追求よりも、長期的な顧客満足追求の方が重要」といった考え方を示され、僕は非常に共感を覚えました。しかし、その準最適化がどうあるべきなのかということについてはクリアにならぬまま、前回のシンポジウムは終わったのでした。


 今回のシンポジウムは、基調講演・招待講演と、「数学が流通問題を解決する〜現場事例を踏まえて〜」、「生物学が流通問題を解決する〜創発的アプローチ〜」という二つのパネル・ディスカッションから構成されており、僕が参加したのは生物学についてのパネルです。司会は今年も西成活裕さんで、パネラーは小林亮さん(広島大学大学院理学研究科教授)、佐竹暁子さん(北海道大学大学院地球環境科学研究院准教授)、竹内秀明さん(東京大学大学院理学系研究科助教授)、栗原聡さん(大阪大学産業科学研究所准教授)、宮田啓友さん(楽天物流株式会社代表取締役社長)、石澤直孝さん(日本郵船株式会社技術グループR&D事業開発室室長代理)、樋口宣人さん(ケンコーコム株式会社取締役)に僕という顔ぶれでした。


 このパネルでは、生物が環境に適応しながら、自律分散的な行動を取ることで自己組織化していく様々な事象や、そこで起こる創発的な現象と、人間が試行錯誤して作り上げる流通モデル、マネジメントモデルとの比較検討を行ったのですが、小林亮さんをはじめとする生物学の専門家の方々からは、非常に示唆的な話をたくさん聞かせていただきました。例えば、粘菌は俯瞰的にモノを見ることができないにもかかわらず、数学のシュタイナー問題を解くことができて、複数拠点間の最短距離を結ぶネットワークを作れるという話。あるいは、自律分散システムによって信号を運用すれば、実際の交通状況を認識した個々の信号が近隣の信号と連携することによって渋滞を緩和させる行動をすることができ、うまくいけば中央制御システムよりも効率よく、ロバスト性も高めていける可能性もあるといった話など、正に話題が尽きなくて時間が足りないといった感じでした。


 僕は、「自律分散」、「自己組織化」、「創発」といった事柄には、学生の頃から関心を持っていました。量子の世界から生物の世界に至る自然界で見られるこれらの現象を、自然界を貫く重要な性質だとした上で、人間や、人間が作る集団・組織、また、その社会や経済をも量子〜生物の世界と連続性を持つものと捉え、それらを包含するものとして地球の生態系を見るのはとても重要な視点です。そして、その延長線上に地球〜太陽系〜宇宙を捉えていくのも、非常に刺激的な思考だと思います。僕は当時から「自然とは何か?」、「<個>と<個>の<関係>、また、<個>と<全体>の<関係>とは何か?」といったことに非常に関心がありましたし、まだインターネットがなかった時代にネットワーク型&サロン型のNPO組織「アルバトロス・クラブ」を運営していましたので、こうした思考から組織マネジメントや創発の<場>形成のヒントをも得ていたのです。


 そんなことを思い出しながら、僕はこのパネル・ディスカッションを楽しませていただいたのですが、理学者の方々のわかりやすい説明のお陰で、数学が流通の最適化やサービス・イノベーションに大きな貢献をなしうることはよくわかりました。また、トリレンマを伴うような複雑な問題については、生物モデルをうまく用いることで準最適解を導き出せる可能性があることについても、前回のシンポジウムの時よりも具体的なイメージを伴って理解できました。そして、理学者の方々には是非実業の現場において具体的な問題を題材とした研究に取り組んでいただきたいし、政府と企業も積極的にそうした<場>を創出していく必要があるように思った次第です。今回集まったメンバーと会場に来てくださった方々が、シンポジウムという<場>の力によって、何らかの創発を起こせるのかどうか、今後が実に楽しみです!


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 拓海広志「多様性を容れる文化」


(無断での転載・引用はご遠慮ください)


自己組織化と進化の論理―宇宙を貫く複雑系の法則 (ちくま学芸文庫)

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自己組織化の経済学―経済秩序はいかに創発するか (ちくま学芸文庫)

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創発―蟻・脳・都市・ソフトウェアの自己組織化ネットワーク

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新しい自然学―非線形科学の可能性 (双書 科学/技術のゆくえ)

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非線形科学 (集英社新書 408G)

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歴史は「べき乗則」で動く――種の絶滅から戦争までを読み解く複雑系科学 (ハヤカワ文庫NF―数理を愉しむシリーズ)

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数学は世界を解明できるか―カオスと予定調和 (中公新書)

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複雑ネットワークの科学

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「複雑ネットワーク」とは何か―複雑な関係を読み解く新しいアプローチ (ブルーバックス)

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安心社会から信頼社会へ―日本型システムの行方 (中公新書)

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渋滞学 (新潮選書)

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無駄学 (新潮選書)

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経済物理学の発見 (光文社新書)

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経済・情報・生命の臨界ゆらぎ―複雑系科学で近未来を読む

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ホロン革命

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生命を捉えなおす―生きている状態とは何か (中公新書)

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生命知としての場の論理―柳生新陰流に見る共創の理 (中公新書)

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暗黙知の次元 (ちくま学芸文庫)

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共通感覚論 (岩波現代文庫―学術)

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場所(トポス) (弘文堂・思想選書)

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改訂新版 共同幻想論 (角川ソフィア文庫)

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新しい現実―政府と政治、経済とビジネス、社会および世界観にいま何がおこっているか

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非営利組織の経営―原理と実践

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ポスト資本主義社会―21世紀の組織と人間はどう変わるか

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マネジメント・フロンティア―明日の行動指針

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イノベーションと企業家精神―実践と原理

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アメーバ経営 (日経ビジネス人文庫)

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気候と文明の盛衰

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ビジュアルでわかる船と海運のはなし

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拓海広志「続・神戸大学にて・・・」

 昨秋、神戸大学にて「職業と学び−キャリアデザインを考える」というテーマの授業を行ってから1年が経ちました。その時の模様や学生たちからいただいたレポートについては、このブログでも「神戸大学にて・・・」で紹介させていただきました。僕が感心したのは学生たちの熱心さで、授業が終わってからも個別の質問攻めで僕はなかなか解放してもらえなかったばかりか、その後も個別に僕に会いにきてくれた学生の数は決して少なくなく、中には原田祐二さんのように「アルバトロス・クラブ20周年記念イベント」に参加してくれ、その後は僕の影響でインドや東南アジアをバックパッカーとして旅するようになった人もいます。


 今秋も同様のテーマでの授業を行うため、僕は神戸の六甲台にある神戸大学に足を運びました。原田さんは昨年からの連続受講でしたが、その他は昨年とは全く異なる顔ぶれで新鮮でした。しかし、学生たちの熱心さは昨年と変わらず、僕が話の合間に学生たちに水を向けると実に様々な質問が出てきて、なかなか白熱した対話ができました。また、授業後の個別質問も昨年同様の熱心さで、僕が教室を出ることが出来たのは授業終了から1時間半ほど経ってからでした。そこで、前回と同様に受講してくれた学生諸君のレポートから幾つか抜粋し、紹介してみようと思います(複数の方のコメントを一つにまとめたものもあります)。


   *   *   *   *   *


※Aさん「会社の仕事において、「顧客」「会社」「自分」の関係を、「For(〜のために)」から「With(〜と共に)」、そして「Together(〜と一体になって)」へと変えていくべきだという考え方を聞いて感銘を受けました。また、「人は他人に言われたことよりも、自分自身で語った言葉に説得される」という話にもなるほどと思いました」


※Bさん「仕事が成功するかどうかの80%はコミュニケーションの仕方に因ると聞いて、改めてコミュニケーションの重要性を認識しました。「英語などの語学は必要不可欠なツール。コミュニケーションにはSPINの質問技法など一定のスキルが必要。しかし、一番大切なのは他者との信頼を構築できる人間性」と聞いて、とても納得できました。また、「上司と部下も、同じ組織にいる以上、みんな仲間だ」という言葉も強く印象に残りました。今回の授業で皆が次々と質問している姿を見ていて、本当にこの講義から何かを引き出してやろうという皆の気持ちが伝わってきました。私ももっと貪欲でいこうと思いました」


※Cさん「仕事において一番大切なことは、誠実であること。信頼を構築すること。そして、価値観を共有することなのだと学びました。それこそが人と人とが繋がり、共通の目的に向かって協力するための必須条件なんだと思いました」


※Dさん「真剣に相手のことを解ろうとしない限り、相手が本当に考えていることなど引き出せないし、相手を理解することなどできない。コミュニケーション能力を向上させていくことが、会社としての最大の価値である「信頼」に結びつくのだと聞きました。これまで「信頼」が最重要とは思っていなかった自分ですが、何故それが必要なのかがよくわかりました」


※Eさん「今日の講義を聞いて、大学生活における自分自身の課題が見えてきました。それはコミュニケーション能力と語学力。思考の転換。そして世界を視野に入れることです。私は会計士を目指しているのですが、今日の講義から仕事のやりがいやスケールを大きくした方が人生が有意義になると感じ、今後は米国公認会計士も視野に入れて勉強したいと思っています」


※Fさん「「社員が成長・成功すれば、会社も成長・成功するし、お客様のビジネスも成長・成功する」」という「Together」の話と、「会社の仕事を通してお客様に価値を提供すると共に、会社の仕事を通して自分の人生を価値あるものにすることが大切」という話に感銘を受けました」


※Gさん「「Think Globally, Act Locally」という言葉はよく耳にしますが、具体的な事例を通してその本当の意味を知ることができました」


※Hさん「かつて拓海さんがある赤字会社の社長を任されたときに、それを立て直すためのアイデアが最初は5つくらいあったが、それからもっと真剣に深く考え抜いたら案が2つに絞り込まれたという話を聞き、なるほどと思いました。何か問題があるときに、「あれもこれも」と言っているうちは真剣には考えていないわけで、「あれかこれか」と思えるところまで考え抜く姿勢を大切にしたいです」


※Iさん「企業が顧客に提供する価値の底辺(ベース)に「商品・品質」と「価格」があり、中段の大きな部分に「サービス」と「ソリューション(顧客の経営課題を解決すること)」がある。しかし、一番上段にあるのは「信頼」だと聞き、「信頼構築力」の重要性を認識しました」


※Jさん「誰かと話をするときは、相手の要求をただ聞くのではなく、その背景にあるものが何なのかを聞き出す技術が必要だという話が頭に残りました」


※Kさん「企業は従業員及びお客様との間で、「価値」を共有できなければ成功できないという話に感銘を受けました。そして、その価値の頂点に「信頼」があるということにも・・・」


※Lさん「私は世界的なファーストフードのチェーン店でバイトをしています。そこで教わるマニュアルには重要な点も多々ありますが、それだけではダメなのではと気づきました。お客様との距離を少し縮めて、ちょっとした対話を心がけることも大切ですね。相手の話を聞くということの重要性がよく認識できた講義でした」


※Mさん「私は話下手でコミュニケーションのことで悩んでいたのですが、今日の話を聞いていてコミュニケーションが上手い人とは聞き上手なのだと認識しました」


※Nさん「「企業は生物であり、常に環境の変化に適応していかねば生存できない」という言葉が印象に残りました」


※Oさん「学生たちから沢山の質問が出ましたが、僕から見ると「何が言いたいのか解らない(笑)」ような質問に対しても、拓海さんがその質問の背景を的確につかんで回答したり、逆質問したりしているのを見ていて、コミュニケーション技術とか質問技法ということが具体的に何なのかを目撃しました」


※Pさん「部活で後輩との人間関係がうまくいかず悩んでいたのですが、拓海さんの話を聞いて、自分には「For(〜のために)」という姿勢や、相手のことを聞く前に自分の思いを押し付けるところが強すぎたと気づきました。また、拓海さんから「部活のような組織であれば、「何のために一緒にいるのか?」という価値観の確認作業が不可欠」と聞き、そこからやり直そうと思いました」


※Qさん「仕事でも、人生全般でも、重要なことは「丁寧に相手の問題に目を向けていくコミュニケーション能力である」という話を、具体的な事例と一緒に聞くことができて、大いに学ぶところがありました。また、グローバル経営を余儀なくされている企業にとって、サプライチェーンネットワークの最適化が如何に重要なことなのかがよくわかりました」


   *   *   *   *   *


 神戸大学学生の皆さん、ありがとうございました。いただいたご質問に対しては、可能な限り個別に回答をさせていただきたいと思います。また、機会があれば神戸の六甲台か深江浜でお会いしましょう!


(無断での転載・引用はご遠慮ください)


ビジュアルでわかる船と海運のはなし

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