拓海広志「神戸大学『職業と学び―キャリアデザインを考える』」

 2009年度から2016年度にかけての8年間、僕は神戸大学キャリアセンターからの依頼を受けて、同大学全学部の希望者を対象に「職業と学び−キャリアデザインを考える」というテーマの授業を行ってきました。


 2009年度の授業は「モノを運ぶことは、心を運ぶこと−国際物流と貿易の仕事、そしてNPO活動を通して」というタイトルで、僕の海との付き合い方と旅の話、貿易・国際物流・ロジスティクス・SCMと仕事の話、国際・民際交流や環境活動支援などのNPO活動の話、僕がかつて「アルバトロスクラブ」というNPOにおいて実現した「ミクロネシアの伝統的帆走カヌーによるヤップ〜パラオ間の石貨交易航海再現プロジェクト」の話、異文化コミュニケーションとMulti Cultural Managementの話、神戸が持つコスモポリタンな文化土壌の話などをネタにしながら、学生たちと話し合いました。


 2010年度の授業は「越境するモノたち―物流におけるグローバル化」というタイトルで、モノの調達、製造、販売のグローバル化が加速する中で、そのサプライチェーン・マネジメントとロジスティクスの現場がどうなっているのかといったことや、ビジネスコミュニケーションのあり方について、学生たちと討議しました、。


 2011年度は「価値を生み出す仕事とは?」というタイトルの授業を行いました。まず、バリュー・チェーン、バリュー・プロポジション、またユーザー/カスタマーエクスペリエンスの考え方の基本を学生たちに説明した上で、仕事の連鎖の中でどうすれば顧客や仲間、社会への「価値」を生み出すことができるのか、また最高の価値である「信頼」をどのように築いていくのかについて、やはり学生たちとの対話形式で進めました。


 2012年度の授業は「真の人財とは何か?」というタイトルで行いました。僕は仕事における「人財」の定義を「仕事を通して顧客や仲間、社会に対して価値を提供し、それを通して自分の人生を価値あるものにできる人」だとしています。巷間ではよく「グローバル人材が必要な時代だ」といった話が出ますが、グローバルな人財(僕は人材という語は使いません)とは何なのかについて、学生の皆さんと一緒に考えてみました。


 2013年度は「グローカルな生き方と働き方」というタイトルにて、「グローバル」と「ローカル」という二項対立を超えた生き方、働き方について、幾つかの具体的な事例をあげて話してみました。これは、この年の11月に同志社大学で開催されたシンポジウム「『グローバル』の普遍性について」での私の講演とも通ずる内容でした。また、僕は2012年12月にも立教大学「グローカルな仕事と人生について考える」と題した終日ワークショップを行っているのですが、その内容とも通底しています。


 2014年度は「モノを介して人を繋ぐ仕事」というタイトルで、流通の仕事全般について話しました。流通とは生産と消費の間のギャップを埋める活動のことを言いますが、それは所有と情報のギャップを埋める商流と時間と空間のギャップを埋める物流に分解されます。ロジスティクスとは物流と在庫を最適化し、商流の効果を高めるためのマネジメントとオペレーションのことですが、そうした仕事についてもお話させていただきました。


 2015年度の授業は「ロジスティクスが生み出す価値について」で、ロジスティクス企業価値と顧客価値、また社会的価値を生み出していくメカニズムやその仕事のあり方について、具体的にお話しさせていただきました。


 2016年度は「サプライチェーンロジスティクスとシェアリングエコノミー」というタイトルの授業でしたが、これは僕が過去にAmerican Chamber of Commerce Japan (ACCJ) E-commerce and Logistics Forum 2013(東京)、The Air Cargo & Logistics Asia 2013 (ACLA 2013)(シンガポール)、Universal Postal Union (UPU) E-Commerce Forum 2014(ベルン)、Asian Logistics and Maritime Conference 2014 (ALMC2014)(香港)などで講演してきた内容がベースとなっています。また、これは今年の6月3日に孫子経営塾で行う講演「サプライチェーン・ロジスティクス―競争戦略と協創戦略」とも通底しています。


 そして2017年度。今年度は、2018年2月1日に神戸大学の教壇に立つ予定です。このところ、サプライチェーン・マネジメントやロジスティクスに関する話が続いているので、今年度は「グローカルな仕事と人生」というタイトルにてもう少し拡がりのある話をしたいと思っています。神戸大学の学生以外の方でも事前に同大学キャリアセンターに断っておけば授業を聴講していただけますので、もしご希望があれば僕宛てにご連絡ください。


 毎回、この授業に参加する学生たちは非常に熱心で、授業中もなかなか積極的に発言や質問をしてくれますが、授業後も個別に僕に質問をしてくる学生たちが多くて結構長くつかまってしまいます。さらにその後も質問のメールを送ってきてくれたり、もっと詳しい話を聞くためにわざわざ僕に会いに来る学生も何人かいたりして、僕は神戸大学の学生たちがとても好きになりました。また、授業後は現役学生とOBが混じり合っての懇親会を御影の居酒屋で開催するのですが、それもなかなか楽しいです。2018年2月1日の授業の聴講をされる方は、是非懇親会にもお越しください!


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