拓海広志「奈良県立大学にて・・・」

 地域創造学部というユニークな学部を持つことで知られる奈良県立大学の亀山恵理子さんの依頼を受け、同大学の講堂で東南アジア(主としてインドネシア)とミクロネシアの海洋文化に関する授業をさせていただきました。


 200名近い学生との対話形式の授業はなかなか愉しく、授業が終わってからも数名の学生とランチを共にしながら様々な語らいをしました。僕にとってこういう時間はとても大切で、この日も若い感性との触れ合いの中で多くのことを学ぶことができて嬉しかったです。


 学生たちからもらったフィードバックシートの中から幾つか選び、紹介させていただきます。


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※Aさん「世界の60ヶ国を旅し、そのうちの幾つかの国で生活してきた拓海さんが、『どこへ行っても、現地の人が普段から食べているものを自分も食べて美味しいと思うようになることが大切だ』と言うのを聞き、「なるほど!」と思いました」


※Bさん「90分の独り舞台。内容もさることながら、拓海さんの話は構成や間の取り方などがとても上手くて、自分も人前で話す仕事、司会などをやりたいという思いに火が点いた!」


※Cさん「ニャイ・ロロ・キドゥルの話を聞き、インドネシアイスラムの深層にある自然信仰のことがわかったように思います。それがインドネシアイスラム教徒が過激な原理主義に走りにくい理由なんでしょうね」


※Dさん「拓海さんの話を聞いていて、年齢などと関係のない「若さ」を感じました。思い立った時に実際に行動に移していけることは大切ですね。私も自分の思いを大切にし、行動して生きていこうと思いました」


※Eさん「実際の体験に裏打ちされた、とてもワクワクする話ばかりでした。私たちの年齢の頃には既に日本中を、そしてアジア太平洋の各地を旅していたという行動力を見習いたいです」


※Fさん「ナマコというものが世界各地の海で獲られ、それが中国及び華人圏に送られるネットワークが存在することに驚いた。今回の講義は本当に驚かされることばかりでした」


※Gさん「インドネシアのドゥクンや日本のイタコを、頭からオカルトや迷信だと決め付けない拓海さんの話し方に、多くの国・地域を旅してきた人の風格のようなものを感じました」


※Hさん「船の建造や航海に必要な『身体知』という言葉を聞いて、ハッとしました。また、質疑応答が多かったのが愉しかったです。本当に、皆で一緒に授業を作っているように感じました」


※Iさん「川で水浴や洗濯をし、食器や野菜を洗い、そこに大小便も流す。そんな生活は汚いと思いましたが、必ずしもそうではないことを聞き、自然の持つ浄化力(エントロピー除去力)に驚きました」


※Jさん「『私も旅をしたい!』と強く感じた授業でした。拓海さんは子どもの頃から現在に至るまで一貫して「海」と関わっており、私もそんなふうに軸のある生き方をしたいと思いました」


※Kさん「一見同じように見えるカヌーなのに、よく見ると形が違う。そうした「モノ」を通して「ヒトと自然の関係性」について知ることの重要さと楽しさを学んだように思う」


※Lさん「拓海さんが撮った写真の中の、インドネシアミクロネシアの子どもたちはどれも生き生きしていますね。お話だけではなく、そのことにとても感動しました」


※Mさん「日本から世界を見る際に、韓国や中国、台湾、ロシアが隣国だというのは誰もが思うが、太平洋に目をやるとミクロネシアも隣国なんだと知った。そうして考えると、ミクロネシアと東南アジアも確かに近い」


※Nさん「『物語が共有されなければ、社会は成り立たず、通貨も価値を持ち得ない』という話を聞き、なるほどと思いました。自分の世界観が大きく拡がった授業でした」


※Oさん「家船で生活しながら国境を越えて移動するバジャウ族の人たち話を聞き、私たちの常識とはまったく違う生活、人生があるのだということを理解しました」


※Pさん「私たちが使っている貨幣は単に商品との交換のためだけの存在だけど、ヤップ島の石貨にはそれまでのプロセス、歴史にも価値を置くものであることを知り、それは大切な感覚だと思いました」


※Qさん「一見楽園のようにミクロネシアだが、実は自殺率が高いということを聞き、とても驚いた」


※Rさん「本を読んで学ぶこと。また、経験を積み重ねることで学ぶこと。それらの組み合わせの重要性について改めて実感することができた授業でした」


※Sさん「身体知という言葉が印象的でした。現代人は道具に頼りすぎているために、これが衰えてきているのだろうか? しかし、我々も自然と関わることで、それを取り戻すことができる」


※Tさん「この授業を通して、異文化を知ることは自らの文化を見直すきっかけになり、違う社会を支援したいとか、違う社会と関わりたいという思いに繋がることを理解しました」


※Uさん「拓海さんが『船を見れば、その地域の人々がどのように海と付き合っているかが見えてくる』と言ったことが、とても印象に残りました」


※Vさん「様々な国とのビジネスの中でマネジメントを学ぶことは、世界中で使える技術を学ぶことだと私は思いますが、その手法に国・地域による特徴はありますか?」


※Wさん「海を通じて、日本とミクロネシア、そして東南アジアは本当につながっているのだということを理解しました。そんな実感をつかめる旅を僕もしていきたいです」


※Xさん「身体知はオカルトでも何でもなく、現代科学とは少しパラダイムが異なってはいるものの、やはり科学であると考えるべきもの。その考え方にうなづきました」


※Yさん「国に属するという意識を持たない移動性向の高い民族が、国への所属を強要され、自らの文化的アイデンティティまで否定されるという話を聞き、それはよくないと思いました」


※Zさん「拓海さんが若い頃からしてきた旅の中で感じた『人の温かさ』。そのことを聞いていて、凄くいいなぁと思いました。私も旅をしたいと思います」


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 他にもたくさんの素敵なフィードバックをいただきました。奈良県立大学の皆さん、本当にありがとうございました。次回は、是非音楽を一緒にやりましょう。再会の機会を楽しみにしています!


(無断での転載・引用はご遠慮ください)


ビジュアルでわかる船と海運のはなし

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