拓海広志「続・神戸大学にて・・・」

 昨秋、神戸大学にて「職業と学び−キャリアデザインを考える」というテーマの授業を行ってから1年が経ちました。その時の模様や学生たちからいただいたレポートについては、このブログでも「神戸大学にて・・・」で紹介させていただきました。僕が感心したのは学生たちの熱心さで、授業が終わってからも個別の質問攻めで僕はなかなか解放してもらえなかったばかりか、その後も個別に僕に会いにきてくれた学生の数は決して少なくなく、中には原田祐二さんのように「アルバトロス・クラブ20周年記念イベント」に参加してくれ、その後は僕の影響でインドや東南アジアをバックパッカーとして旅するようになった人もいます。


 今秋も同様のテーマでの授業を行うため、僕は神戸の六甲台にある神戸大学に足を運びました。原田さんは昨年からの連続受講でしたが、その他は昨年とは全く異なる顔ぶれで新鮮でした。しかし、学生たちの熱心さは昨年と変わらず、僕が話の合間に学生たちに水を向けると実に様々な質問が出てきて、なかなか白熱した対話ができました。また、授業後の個別質問も昨年同様の熱心さで、僕が教室を出ることが出来たのは授業終了から1時間半ほど経ってからでした。そこで、前回と同様に受講してくれた学生諸君のレポートから幾つか抜粋し、紹介してみようと思います(複数の方のコメントを一つにまとめたものもあります)。


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※Aさん「会社の仕事において、「顧客」「会社」「自分」の関係を、「For(〜のために)」から「With(〜と共に)」、そして「Together(〜と一体になって)」へと変えていくべきだという考え方を聞いて感銘を受けました。また、「人は他人に言われたことよりも、自分自身で語った言葉に説得される」という話にもなるほどと思いました」


※Bさん「仕事が成功するかどうかの80%はコミュニケーションの仕方に因ると聞いて、改めてコミュニケーションの重要性を認識しました。「英語などの語学は必要不可欠なツール。コミュニケーションにはSPINの質問技法など一定のスキルが必要。しかし、一番大切なのは他者との信頼を構築できる人間性」と聞いて、とても納得できました。また、「上司と部下も、同じ組織にいる以上、みんな仲間だ」という言葉も強く印象に残りました。今回の授業で皆が次々と質問している姿を見ていて、本当にこの講義から何かを引き出してやろうという皆の気持ちが伝わってきました。私ももっと貪欲でいこうと思いました」


※Cさん「仕事において一番大切なことは、誠実であること。信頼を構築すること。そして、価値観を共有することなのだと学びました。それこそが人と人とが繋がり、共通の目的に向かって協力するための必須条件なんだと思いました」


※Dさん「真剣に相手のことを解ろうとしない限り、相手が本当に考えていることなど引き出せないし、相手を理解することなどできない。コミュニケーション能力を向上させていくことが、会社としての最大の価値である「信頼」に結びつくのだと聞きました。これまで「信頼」が最重要とは思っていなかった自分ですが、何故それが必要なのかがよくわかりました」


※Eさん「今日の講義を聞いて、大学生活における自分自身の課題が見えてきました。それはコミュニケーション能力と語学力。思考の転換。そして世界を視野に入れることです。私は会計士を目指しているのですが、今日の講義から仕事のやりがいやスケールを大きくした方が人生が有意義になると感じ、今後は米国公認会計士も視野に入れて勉強したいと思っています」


※Fさん「「社員が成長・成功すれば、会社も成長・成功するし、お客様のビジネスも成長・成功する」」という「Together」の話と、「会社の仕事を通してお客様に価値を提供すると共に、会社の仕事を通して自分の人生を価値あるものにすることが大切」という話に感銘を受けました」


※Gさん「「Think Globally, Act Locally」という言葉はよく耳にしますが、具体的な事例を通してその本当の意味を知ることができました」


※Hさん「かつて拓海さんがある赤字会社の社長を任されたときに、それを立て直すためのアイデアが最初は5つくらいあったが、それからもっと真剣に深く考え抜いたら案が2つに絞り込まれたという話を聞き、なるほどと思いました。何か問題があるときに、「あれもこれも」と言っているうちは真剣には考えていないわけで、「あれかこれか」と思えるところまで考え抜く姿勢を大切にしたいです」


※Iさん「企業が顧客に提供する価値の底辺(ベース)に「商品・品質」と「価格」があり、中段の大きな部分に「サービス」と「ソリューション(顧客の経営課題を解決すること)」がある。しかし、一番上段にあるのは「信頼」だと聞き、「信頼構築力」の重要性を認識しました」


※Jさん「誰かと話をするときは、相手の要求をただ聞くのではなく、その背景にあるものが何なのかを聞き出す技術が必要だという話が頭に残りました」


※Kさん「企業は従業員及びお客様との間で、「価値」を共有できなければ成功できないという話に感銘を受けました。そして、その価値の頂点に「信頼」があるということにも・・・」


※Lさん「私は世界的なファーストフードのチェーン店でバイトをしています。そこで教わるマニュアルには重要な点も多々ありますが、それだけではダメなのではと気づきました。お客様との距離を少し縮めて、ちょっとした対話を心がけることも大切ですね。相手の話を聞くということの重要性がよく認識できた講義でした」


※Mさん「私は話下手でコミュニケーションのことで悩んでいたのですが、今日の話を聞いていてコミュニケーションが上手い人とは聞き上手なのだと認識しました」


※Nさん「「企業は生物であり、常に環境の変化に適応していかねば生存できない」という言葉が印象に残りました」


※Oさん「学生たちから沢山の質問が出ましたが、僕から見ると「何が言いたいのか解らない(笑)」ような質問に対しても、拓海さんがその質問の背景を的確につかんで回答したり、逆質問したりしているのを見ていて、コミュニケーション技術とか質問技法ということが具体的に何なのかを目撃しました」


※Pさん「部活で後輩との人間関係がうまくいかず悩んでいたのですが、拓海さんの話を聞いて、自分には「For(〜のために)」という姿勢や、相手のことを聞く前に自分の思いを押し付けるところが強すぎたと気づきました。また、拓海さんから「部活のような組織であれば、「何のために一緒にいるのか?」という価値観の確認作業が不可欠」と聞き、そこからやり直そうと思いました」


※Qさん「仕事でも、人生全般でも、重要なことは「丁寧に相手の問題に目を向けていくコミュニケーション能力である」という話を、具体的な事例と一緒に聞くことができて、大いに学ぶところがありました。また、グローバル経営を余儀なくされている企業にとって、サプライチェーンネットワークの最適化が如何に重要なことなのかがよくわかりました」


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 神戸大学学生の皆さん、ありがとうございました。いただいたご質問に対しては、可能な限り個別に回答をさせていただきたいと思います。また、機会があれば神戸の六甲台か深江浜でお会いしましょう!


(無断での転載・引用はご遠慮ください)


ビジュアルでわかる船と海運のはなし

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