拓海広志「立教大学にて・・・」

 立教大学社会学部で教鞭を取る加藤晃生さんから招かれ、同学部の1年生を対象とした加藤さんの授業でゲストスピーカーを務めてきました。加藤さんが学生たちに与えた課題図書は社会学の入門書『Do! ソシオロジー』(友枝敏雄・山田真茂留編)で、学生たちはこの本の第8章「ネオリベラリズム福祉国家」(武川省吾)、第10章「21世紀社会と人類の幸福」(高坂健次)、第11章「グローバル化と文明の共生」(今田高俊)を読んだ上で、グローバリズムについての自らの見解を発表します。僕の役割は、その発表に対して加藤さんとは少し異なる視点から意見を述べたり、質問を投げかけることです。


 学生たちの多くは、グローバリゼーションは避けられない世界の流れであり、それには肯定的な面もあるが、南北問題に代表されるような「格差」の問題は看過できず、その点を正していく必要があると考えているようでした。ある学生は、その処方箋の一つとしてフェアトレードを提案してくれました。僕もフェアトレードを標榜する企業や団体とお付き合いをさせていただいたことがありますので、その本来の意義と実践に際しての問題点については理解しています。特にコーヒーやカカオのように、プランテーションで生産が行われることが多く(*)、商品相場での投機対象となりやすい一次産品については、フェアトレードの考え方を導入することが必要だと考えています。


 ただ、学生の多くはフェアトレードの意味を十分理解せぬまま議論をしていたようで、加藤さんと僕がその基本的な説明をせざるを得なかったため、90分という限られた授業時間内では議論は十分煮詰まりませんでした。そこで、一同は授業後も引き続き近所の四川料理屋に場を移し、重慶火鍋をつつきながら議論を続けたのですが、これは僕にとってもなかなか愉しいひと時となりました。加藤さんは、再度この議論の続きをしたいとのことで、「学生たちに『拓海広志に挑む』というテーマの小論文を書かせる」と言われていましたので、今後の展開が楽しみです。何はともあれ、加藤さん、立教大学の皆さん、ありがとうございました。


(*)ただし、コーヒーについては、プランテーションではない中小規模農園での生産率が70%近くになります。


(無断での転載・引用はご遠慮ください)


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