拓海広志「キラキラ料理帖(5)」

 ここでは僕がかつてインドネシアの友人のお母さんたちから教わったインドネシア料理のレシピを、ちょっとしたエピソードを交えながらご紹介したいと思います。ただし、材料やスパイスの分量を明記していないのは、キラキラ(about)料理帖ならではのことと、お許しください(^^;;)。


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※「イカン・アチャル・ぺスモル」

 アチャル(acar)とは果物や野菜の酢漬けないしは薄塩漬物(やや甘酸味)を意味するインドネシア語なのですが、それは恐らく日本のアチャラ漬けとも通ずるものなのでしょう。そのルーツをたどるとペルシア語のachar がポルトガル語を経てインドネシアと日本に伝わったようで、なかなか興趣が湧いてきます。今回はイカン・アチャル・ぺスモル(ikan acar pesmol)と呼ばれる料理についてご紹介してみます。

1)グルクマ(ikan kembung)の内臓を取り除き、塩と酢でもみ洗いした後、油で揚げる。

2)赤タマネギとククイノキ(keiri)の実、ターメリック(kunyit)をチョベックですりつぶす。

 ククイノキの実とターメリックをすりつぶした汁を混ぜ合わせたものは料理によく使われるので市場(pasar)でも売っていますが、本当に美味しい料理を作ろうと思えば、サンバル(sambal)同様にチョベックを使って自らすりつぶすべきでしょう。このあたりは美味しい刺身や蕎麦を食べようと思えば、ワサビはインスタントを使わぬ方がよいというのと同じ理屈です。

3)種を取り除いた大赤唐辛子、鷹の爪、赤タマネギを細かく刻む(鷹の爪の先は切り落としておくこと)。

4)ココ椰子の胚乳を削ったもの(kelapa parut)に水を含ませ、その搾り汁(santan:ココナッツミルク)を作る。

5)上記(2)を中華鍋に入れて多目の油で炒める。その際に月桂樹の葉も加える。

6)上記(3)の大赤唐辛子を加えてから、上記(4)のサンタンを少し注ぎ、続けて上記(3)の鷹の爪と赤タマネギも加える。

7)水を少し注ぎ、砂糖、塩、酢を加える。

8)そこに上記(1)で揚げたグルクマを入れる。

9)茹で上がったら、月桂樹の葉を取り除いて出来上がり。


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※「トゥルール・ピンダン」

 ピンダン(pindang)とは「塩味をつけた魚などで作ったおかず」を意味する語なのですが、中でも今回ご紹介するトゥルール・ピンダンはタマリンドの甘酸っぱい味と香りが食欲をかきたてる美味しい料理です。

1)卵(telur)を茹でてから皮をむき、包丁で縦に四箇所ほど切れ目を入れる。

2)鍋で沸騰させた湯にケチャップ・マニス(kecap manis)を加え、そこに上記(1)のゆで卵を入れる。

3)赤タマネギ、種を取り除いた大赤唐辛子、鷹の爪を細かく刻み、それらを鍋に放り込む。

4)砂糖、塩、酢を少量加え、アサム・ジャワ(asam jawa:タマリンドの実を塩漬けにしたもの)の搾り汁も加える。

5)鍋に月桂樹(salam)の葉を入れ、しばらく煮込んだら出来上がり。

 よく見られるピンダンとしては、サバヒー(ikan bandeng:ミルクフィッシュ)を使ったものもありますが、魚を使う場合は月桂樹の葉の代わりに、セライ(serai:レモングラス)の葉を使った方が臭みが消えて美味しいです。また、魚の場合は調理後一昼夜寝かして置く方がより美味しくなるとも言われています。

 ちなみにサバヒーは南スラウェシなどでは養殖されていることも多いのですが、市場では高級魚として扱われており、その薫製は東ジャワのスラバヤ界隈の特産品ともなっています。炭焼きにして食べたりもしますが、ピンダンにしたり、薫製にして食べる方が美味しさが引き立つように思います。


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※「クタン・ブブル・クアー・ドゥリアン」

 今日はドゥリアンを上手に使ったデザートをご紹介します。その名も、クタン・ブブル・クアー・ドゥリアン(ketan bubur kuah durian)。つまり「糯米のドゥリアン・ソース和え」です。何となくヘビーな感じ、またドゥリアンの匂いが鼻につきそうな感じがするのですが、実は意外にあっさりしていて美味しいので、お勧めです。

1)少量の塩を加えて糯米(ketan)を炊く。

2)炊きあがったご飯を蒸す。

3)ココ椰子の胚乳を削ったもの(kelapa parut)に水を含ませ、その搾り汁(santan:ココナッツミルク)を作る。

4)鍋に入れたサンタンに細かく砕いたジャワ砂糖(gula java)と砂糖、塩を加え、加熱する。

5)その鍋に種を取り除いたドゥリアン(durian)の実を入れる。

6)バニラ・エッセンスを鍋に落とす。

7)上記(2)の蒸し上がった糯米と、(6)のドゥリアン・ソースを冷蔵庫で冷やす。

8)ドゥリアン・ソースを糯米にかけて食べる。


(無断での転載・引用はご遠慮ください)


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