拓海広志「キラキラ料理帖(4)」
ここでは僕がかつてインドネシアの友人のお母さんたちから教わったインドネシア料理のレシピを、ちょっとしたエピソードを交えながらご紹介したいと思います。ただし、材料やスパイスの分量を明記していないのは、キラキラ(about)料理帖ならではのことと、お許しください(^^;;)。
* * * * * * *
※「ロントン・サユール」
バリ・ヒンドゥーにとって最大の聖地でもあるバリ島最高峰アグン山に登り、山頂付近にテントを張って一夜を明かしたことがあります。満天の星空を見ながら持って行ったブランデーをちびちびやっていると、こうして地球の上で生きていられるだけで幸せなんだと、しみじみ思えたりするから不思議なものです。
この登山の際に、出発点となったブサキ寺院周辺の店で僕が買い込んだのが、クトゥパット(ketupato)と呼ばれる米料理でした。クトゥパットは椰子の葉で編んだ籠の中に米を入れて約4時間かけて蒸し上げたものなのですが、蒸し上がった米はやや餅状になるため、弁当にしても傷みにくく、また腹持ちがよいのです。
クトゥパットは祭りなどで神々に供される特別な料理でもあるのですが、それと少し似た米料理にロントン(lontong)というものがあります。ロントンはクトゥパットよりも一般的で、ごく日常的に食されるのですが、こちらも普通に炊いたご飯よりも粘り気があり、腹持ちもよいです。今回はこのロントンに野菜のココナッツ・ミルク煮を付け合わせたロントン・サユール(lontong sayur)をご紹介します。
1)インゲン豆(kacang buncis)をスライスし、ナス(terong jepang)の皮をむいて細かく刻む。また、ナガササゲ(kacang panjang)とトマト(tomat)も刻んでおく。
2)ラブ・シアム(labu siam:とうなすの一種)を刻んでから水洗いし、塩もみした後、再び水洗いする。
3)テンぺ(tempe)を細かく方形に刻み、ペテ(pete)の実を半分に切っておく。
4)バナナの葉をきれいに洗って筒状に丸め、一方の先を楊枝でとめる。といだ米をその筒の中に入れ、もう一方の先も楊枝でとめる。それを水をたっぷり入れた鍋の中に入れて茹でる(湯の中に塩を少し落としておくこと)。茹でる時間は米の質によっても異なるが、大体1〜2時間茹でればロントン(lontong)が出来上がります。
5)ココ椰子の胚乳を削ったもの(kelapa parut)に水を含ませ、その搾り汁(santan:ココナッツ・ミルク)を作る。
6)乾燥小エビ(udang kering)、赤タマネギ(bawang merah)、種を取り除いた赤唐辛子(cabe merah keriting)に塩をまぶしながらチョベックですりつぶし、トゥラシ(terasi)、砂糖、塩を加えながら多目の油で炒める。
7)それにペテを加えて炒め、少量のサンタンを注ぎ、砂糖、塩を加えて煮る。
8)そこに刻んでおいたインゲン豆とラブ・シアム、ナガササゲ、トマトを入れて、さらに煮込んでいくとスープが出来上がる。
9)鶏の卵(telur)を茹でた後、スライスする。
10)上記(4)のロントンと(9)のゆで卵を、(8)の野菜スープに添えると出来上がり。
* * * * * * *
※「マルタバク」
インドネシアの料理というのは、往々にしてきれいに整ったレストランで食べるよりも、街角の小さな食堂や、路上に天幕を張っただけの店、あるいはワルン(屋台店)で食べる方が美味しいのですが、今回はジャカルタの大衆料理の代表格とも言えるマルタバク(martabak)をご紹介します。きちんとした店ではまず皮から作るのですが、ここでは家庭で作ることを前提としているため、春巻の皮を使ってみることにします。
1)ジャガイモ(kentang)を茹でてから皮をむいて細かく刻む。ネギも細かく刻み、ジャガイモとネギを混ぜ合わせるようにしてボールの中に入れる。
2)赤タマネギと種を取り除いた赤唐辛子に塩をまぶしながらチョベックですりつぶし、多目の油で炒める。
3)それに牛肉(sapi)の挽肉(daging giling)を入れ、胡椒、砂糖、塩を加えながら炒める。
4)炒め終えた挽肉を上記(1)のボールに入れて混ぜ合わせ、そこに生卵を落とす。
5)春巻(lumpia)の皮(kulit)で上記の(4)を包む。包む際に皮の貼り合わせ部分に生卵を塗る(糊の効果を期待する)。
6)これを油で揚げれば出来上がりだが、かなり大きめの鍋を使い、油をすくっては上から注ぐようにして揚げるのが好ましい。
7)マルタバクのソースを作るために種を残したままの大赤唐辛子と赤タマネギ、鷹の爪(cabe rawit hijau)をチョベックですりつぶし、砂糖、塩、酢を加えた後、熱湯を注ぐ。
8)上記の(6)に(7)のソースを掛けて食べる。
ジャカルタなどのインドネシアの都市では外食文化が行き渡っています。マルタバクはジャカルタの外食メニューにおける、軽食の部・人気ナンバーワンといったところでしょうか。
* * * * * * *
※「トゥミス・オヨン」
トゥミス(tumis)というのは「油で炒めた野菜料理」を意味する語なのですが、今回はヘチマの仲間であるオヨン(oyong)を使ったトゥミスをご紹介します。
1)オヨンの実から皮を削ぎ落としてから、ぶつ切りにする。
2)赤タマネギ(bawang merah)をスライスし、ニンニクをチョベックですりつぶす。それらを一緒に中華鍋に入れ、多目の油で炒める。好みによっては乾燥小エビ(udang kering)をすりつぶしたものを加えてもよい(個人的にはその方が美味しいと思う)。
3)そこに生卵を落として炒め、さらにぶつ切りにしたオヨンも入れる。
4)それに水を注ぎ、砂糖、塩を加えながらオヨンが柔らかくなってくるまで茹でる。
5)鍋にミソア(misoa:米を原料とする細い麺)を入れ、それが茹で上がれば出来上がり。
(無断での転載・引用はご遠慮ください)
【アグン山の山頂付近にて】
- 作者: ミゲル・コバルビアス,関本紀美子
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 1991/08/01
- メディア: 単行本
- クリック: 8回
- この商品を含むブログ (19件) を見る