拓海広志「『モンドヴィーノ』を観る」

 無類の酒好きの僕ですが、日常的に飲むのは赤ワインと芋焼酎とビール。そんな中でも未だにテロワールにこだわる愚直なブルゴーニュものは好きです。でも、今後は少し節制をと考えている、今日この頃です。やれやれ・・・(^^;;)。


 ワインの文化と歴史はヨーロッパの風土や思想、そして人々の生活と深く関わっていて、それらについて知ることはとても面白いです。また、休日にフランスの地方を巡って小さなワイナリーやビストロを訪ね、野趣あふれる田舎料理を食べながらそこの地ワインを飲むのも、僕のような旅人にとっては大きな楽しみの一つです。


 しかし、最近のワインのトレンドを十数年前のそれと比較すると、新世界ワインの台頭と味の平準化の勢いは凄まじいですね。特に僕らが日常飲みに使う価格的に手頃なワインは、どこで作られたものでもほとんど同じ味と言っても過言ではないようです。そして、最近明らかに増えている、人工的な着色と着香が施されたワインたち・・・。


 僕は仕事の関係でワイン業界には多少縁があり、いろいろな人たちの話を聞く機会があるので、そうしたことの背景は多少知っていたのですが、昨年『モンドヴィーノ』という映画を観て認識を新たにしました。映像的には粗さも目立ちましたが、ワイン好きにはたまらなく面白い映画でした。


 世界中のワイン市場に大きな影響を与えるワイン評論家。その嗜好に合ったワインを作らせるべく世界各地のワイナリーを指導する醸造コンサルタント。彼らを利用しながらワインビジネスを伸ばす人々と、彼らに反発しながらあくまでもテロワールにこだわったワイン造りを続ける人々。また、新しいライフスタイルやファッションの中で新たなワインの位置付けを模索する人々・・・。


 こうした様々な立場の人々へのインタビューを連ねる形で作られた『モンドヴィーノ』は、世界のワインビジネスがどうなっているのかを教えてくれるだけではなく、その背景にあるグローバリズムローカリズムの闘争と融合の具体的なあり様も見せてくれます。その意味ではワインに興味がない人が観ても面白いでしょう。


(無断での転載・引用はご遠慮ください)


Link to AMAZON『モンドヴィーノ』

モンドヴィーノ [DVD]

モンドヴィーノ [DVD]

Link to AMAZON『ブルゴーニュワインがわかる』
ブルゴーニュワインがわかる

ブルゴーニュワインがわかる

Link to AMAZON『黄金丘陵』
Link to AMAZON『ワインと風土−歴史地理学的考察』
ワインと風土―歴史地理学的考察

ワインと風土―歴史地理学的考察

Link to AMAZON『オーガニック・ワインの本』
オーガニック・ワインの本

オーガニック・ワインの本

Link to AMAZON『ヴォーヌ=ロマネの伝説 アンリ・ジャイエのワイン造り』
ヴォーヌ=ロマネの伝説 アンリ・ジャイエのワイン造り

ヴォーヌ=ロマネの伝説 アンリ・ジャイエのワイン造り

Link to AMAZON『ワインと外交』
ワインと外交 (新潮新書)

ワインと外交 (新潮新書)

Link to AMAZON『ワインづくりの思想』
ワインづくりの思想 (中公新書)

ワインづくりの思想 (中公新書)

Link to AMAZON『シャンパン物語』
シャンパン物語―その華麗なワインと造り手たち

シャンパン物語―その華麗なワインと造り手たち

Link to AMAZON『ワインの世界史』
ワインの世界史 (中公新書 (415))

ワインの世界史 (中公新書 (415))

Link to AMAZON『パンとワインを巡り神話が巡る』
パンとワインを巡り 神話が巡る―古代地中海文化の血と肉 (中公新書)

パンとワインを巡り 神話が巡る―古代地中海文化の血と肉 (中公新書)

Link to AMAZON『葡萄酒紀行』
葡萄酒紀行―ソムリエール和飲(ワイン)20選

葡萄酒紀行―ソムリエール和飲(ワイン)20選