拓海広志「続々々々々・神戸大学にて・・・」

 2009年度、2010年度、2011年度、2012年度、2013年度に続いて、2014年度もまた神戸大学キャリアセンターの依頼で、同大学全学部の希望者を対象に「職業と学び−キャリアデザインを考える」というテーマの授業を行いました。


 2009年度の授業は「モノを運ぶことは、心を運ぶこと−国際物流と貿易の仕事、そしてNPO活動を通して」というタイトルで、僕の海との付き合い方と旅の話、貿易・国際物流・ロジスティクス・SCMと仕事の話、国際・民際交流や環境活動支援などのNPO活動の話、僕がかつて「アルバトロスクラブ」というNPOにおいて実現した「ミクロネシアの伝統的帆走カヌーによるヤップ〜パラオ間の石貨交易航海再現プロジェクト」の話、異文化コミュニケーションとMulti Cultural Managementの話、神戸が持つコスモポリタンな文化土壌の話などをネタにしながら、学生たちと話し合いました。


 2010年度の授業は「越境するモノたち―物流におけるグローバル化」というタイトルで、モノの調達、製造、販売のグローバル化が加速する中で、そのSCMとロジスティクスの現場がどうなっているのかといったことや、ビジネスコミュニケーションのあり方について、学生たちと討議しました、。


 2011年度は「価値を生み出す仕事とは?」というタイトルの授業を行いました。まず、バリュー・チェーン、バリュー・プロポジション、またカスタマーエクスペリエンスの考え方の基本を学生たちに説明した上で、仕事の連鎖の中でどうすれば顧客や仲間、社会への「価値」を生み出すことができるのか、また最高の価値である「信頼」をどのように築いていくのかについて、やはり学生たちとの対話形式で進めました。


 2012年度の授業は「真の人財とは何か?」というタイトルで行いました。僕は仕事における「人財」の定義を「仕事を通してお客様や仲間、社会に対して価値を提供し、それを通して自分の人生を価値あるものにできる人」だとしています。巷間ではよく「グローバル人材が必要な時代だ」といった話が出ますが、グローバルな人財(僕は人材という語は使いません)とは何なのかについて、学生の皆さんと一緒に考えてみました。


 2013年度は「グローカルな生き方と働き方」というタイトルにて、「グローバル」と「ローカル」という二項対立を超えた生き方、働き方について、幾つかの具体的な事例をあげて話してみました。これは、この年の11月に同志社大学で開催されたシンポジウム「『グローバル』の普遍性について」での私の講演とも通ずる内容でした。


 2014年度は「モノを介して人を繋ぐ仕事」というテーマで、物流、SCM、EC(e-Commerce)などについてお話しました。毎回、この授業に参加する学生たちは非常に熱心で、授業中もなかなか積極的に発言や質問をしてくれますが、授業後も個別に僕に質問をしてくる学生たちが多くて長時間つかまってしまいます。さらにその後も質問のメールを送ってきてくれたり、もっと詳しい話を聞くためにわざわざ僕に会いに来る学生もいたりして、僕は神戸大学の学生たちがとても好きになりました。今回受講してくれた学生諸君のレポートから幾つか抜粋し、紹介してみようと思います(複数の方のコメントを一つにまとめたものもあります)。


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※Aさん「拓海さんが教室内を歩き回りながら学生たちに様々な質問を投げかけていくという講義スタイルで新鮮だったし、自分自身の頭で考えねばならなかったので集中できました。また、もっと頭を柔らかくすることが大事だと感じました」


※Bさん「小売流通におけるe-Commerceのシェアが高まるにつれて宅配便サービスの利用度が高まっているが、スピード優先で荷物を届けても消費者は不在のことが多い。そうしたサプライチェインのムダ・ムラ・ムリが、社会全体の負荷になってきているという話を興味深くうかがいました」


※Cさん「今日のお話は根拠や理由が明確で、私が論理的に納得できる瞬間がとても多かったです。他方、拓海さんは教室内を歩きながら、一人一人の眼を見て話をされており、感情に訴えてくる分部も強かったので、とてもバランスが取れていたように思います」


※Dさん「拓海さんは海外の様々な国で生活や仕事をされてきたため、『相手の立場に立って物事を考え、その価値について考える』という言葉に重みがあり、留学生の私には特に共感できました」


※Eさん「私は個別指導の塾でアルバイトをしています。拓海さんの仰っていた『Mission、VisionValue、Strategy、Action Plan』を生徒と私が共有して、共に目標に向かっていかねばと思いました」


※Fさん「e-Commerceという非常に便利な世界の背後で、そのSCMを最適化し、効率的で効果的な物流を提供するために様々な人が働いていることを知り、視野が拡がりました」


※Gさん「目に見える問題に対応するだけではソリューションにはならない。その問題の背後にあるものをつかまないと、本当のニーズは見えてこないという話には、深く考えさせられました」


※Hさん「リーダーだけがVisionに向かって走って行っても、それをメンバーと共有できなければ組織は前に進まないことを学びました。また、私には将来経営者になったときに共有したい価値(Value)があったのですが、今日のお話を伺っていてそれはまだInside-Outの視点に立った独りよがりのものだと思いました」


※Iさん「物流というものを社会の底辺の仕事だと思っていましたが、それが実際はSCM最適化の鍵を握るもので、特にグローバル社会においてはその複雑性と重要性が増していることを理解しました」


※Jさん「とても論理的にお話をされる拓海さんなのに、『人がモノやサービスを買う際には論理よりも感情が勝る』と言うのを聞いて、人の心に働きかけることの重要性を思いました」


※Kさん「ビジネスマンのFoundationとは「Mind」「Knowledge」「Skill」だが、特に重要なのは「Mind」。また、Foundationがしっかりしていても、実際に「Action(Process)」を取らなければ「Performance」は上がらないと教わりました。自分は日頃から「Action」が中途半端なので、それをしっかりしたいと思いました」


(無断での転載・引用はご遠慮ください)


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